2011-01-01から1年間の記事一覧

「タタール人の砂漠」ディーノ・ブッツァーティ作1940年

町を出て、辺境にある国境の砦で軍人として働き始める若者=ドローゴ。 彼は一応、この小説の主人公ではあるが、規律と習慣が見る夢の主体に仮託されたような人物で、内面の砂漠に直面し続けるだけです。 国境にある砦は、前面に異国の砂漠が拡がる。これと…

「最後の光」レオン・フラピエ作(短篇集「女生徒」から)1905年

机、テーブル、椅子、鏡と、まだ生活必需品、一つ一つが名前を持った子供のように存在した時代。それを揃えることが人間の生、足りえた時代。 フラピエの書く小説の人間描写も、少ない一つ一つが、時間の重なりを経た、疲れと、それ故の誰にも知られえない寂…

「プロシャ人」レオン・フラピエ(短篇集『女生徒』より)1905年

1863年フランス、パリに生まれた作家レオン・フラピエ。 彼の1905年に発表された短篇集に「プロシャ人」という10ページ程度の小説がある。 主人公は後にプロシャ人と呼ばれることになるツリコ。生粋のフランス生まれである。 彼は気さくで人当たり…

「素晴らしき日曜日」黒澤明(1947年)を見て。

我々の後ろから冷たい風が吹き抜けていく。 戦争が終わって2年後の街だ。 貧相な姿の我ら。この映画のカップルも、街も、そんな己の姿に苛立っている。 焼け野原になって、まともな生活をしているのは、闇の商売をしている人間だけだ(駅のゴミ箱も道路の標…