「どん底」黒澤明(1957年)を見て。

 この映画のように、下(しも)から人間を捉えていこうとした時、切れ目の無い流れに、ノリが生まれる。
人と人と人と人「と」で繋いで、韻を踏みノリが出来る瞬間、
映像のモンタージュに拠らないツナギが、この時間=リズムを作り出している。
 ただ、個々の狂気だけは孤立している。
それも女性は症状が見えやすく描かれる。男性は狂気が日常の中に融合してリズムを微妙に狂わせ、よりグルーヴィーな感じになったりするから困る。結局、映画の終わりで自殺をして、音楽を止めるのは男の狂気だった。
男の狂気は映画の多くの時間=リズムにおいて目だって狂っていない(潜在しているから)、しかし最終的に音楽自体を止める爆発力を持った狂気として描かれたのは男だ。グルーヴィーという症状が出た映画の迫力。それが実況中継される、ライブな映画。グルーヴィーなノリがいつか、世界を破滅させる予感を感じた、この映画のラストであったよ。。
 

どん底 [DVD]

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